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水千草 / 白き蝶々のはらり舞う
~ 繻 子 院 縷 縷 文 庫 ~ 水 千 草 作 品 集 よ り ~
/ / / 阿修羅の耳
聞いている
じっと聴いている
吸い取るように聞いている
阿修羅の耳
/ / / 螺 旋
ひとつ積んで一歩
ふたつ積んでまた一歩
延々と天に向かい
積む螺旋
/ / / ちいさな宇宙
ひとりのちいさな頭が
ささえきれずに溢れたとして
何の罪がありますか
その頭脳は紛れもなくちいさな宇宙です
/ / / ささゆり
森の木はわたしに
さぁーーー それは どうかなーーー と
森の姫をさらってはいけないよ
ささゆりをさらってはいけないよ
/ / / 影 法 師
誰かあの日のわたしを知らないかしら
長い影法師に立ちすくんで
神様を探していた
オカッパの女の子
今が永遠につづくと信じて疑わない
あの日のあの女の子を見た人はもういないの?
探し疲れてもう疲れちゃった
そうだったのね
神様もこの子を探せなかったのね
長い影法師の影に隠れていたからかな
もう大丈夫
長い年月を歩いていたら
憧れの永遠に巡り合えたみたい
/ / / お星さまの彼方
まだ誰も見たことのない
天女の羽衣
そんな花
ふわり咲いてい
たりして
オーロラ色の翼持つ
鳥が鳥が飛び交って
いたりして いたりして
まだ誰も見たことのない
檸檬色の海が海が
果てしなく
無限に広がっていたりして
/
/ / 落ち葉の小径
雑木林の坂道に
朝陽がふわっとあたります
みっつのわたしが歩いてました
おじさんズンズン行っちゃって
曲がりくねった落ち葉の小径
ひとりぼっちのみっつのわたし
長い月日がたちました
おじさん遠くに行っちゃって
あの日も遠くなっちゃって
あの日の落ち葉の音だけが
静かな森に響いています
/ / / 織 姫
虹 織りますか
風 織りますか
雲 織りますか
いいえ 雨 織りたいの あたし
/ / / 傍らに
傍らにいつも蜉蝣
泣き濡れて
呪縛の溶ける日を待つの
/ / / あやまちの木に咲く花は ...
あやまちの木に咲く花に恋をして
そっと注ぐの
あやまち色のしたたる水を
/ / / 甘撚りの ...
甘撚りの三つ編みで
月に祈っていた少女
涙のわけを誰も知らない
清いうなじを風がゆく
/ / / 桃の花咲く樹の下で
桃の花咲く樹の下で ...
懺悔の谷を七つ渡れば
深い眠りがあるかしら
裂けた手指を癒し合う
安らぎの日々があるかしら
桃の花咲く樹の下で
桃の花咲く樹の下で
// まぼろし色の・・・
神秘を秘めた
この色を
どんな色と言いましょう
まぼろし色と言いましょう
目をそらしたら
消えている
まぼろし色と言いましょう
救いはきみ
きみがそこにいてくれるから
ああ
わたしもここに
ここに .. いて .. いいのね
雨上がりのうららかな午後
まぼろし色の
まぼろし色の 君としゃくなげ
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// 紅い花を散らしては・・・
・・・
紅い花を散らしては
・・・
花を摘むのはだぁ~れ
純白の花を摘んではだめ
青い花を摘んではだめ
紅い花を散らしてはだめ
紅い花を散らしてはだめ
思わせぶりな眼差しの
絹の衣のヴィーナスたちが
誘っては惑わせ
誘っては惑わせ
月の彼方に隠れるの
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// はかな言葉の・・・
・・・
はかな言葉の野原にて
・・・
はかな言葉を口ずさみ
消えゆく夕日を追いました
茜 茜は 罪茜色
茜 茜は ゆきずりの色
はかな言葉を口ずさみ
暮れゆく野原に散りました
茜 茜は 露茜色
茜 茜は かりそめの色
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// 散る桜の木の下で・・・
舞
散る桜の木の下で
・・・
内気なその女
ひと
が恋をしたのは
二十才のときでした
文学が好きなその青年は
桜をとても愛していました
ふたりはいつも
城跡のある町の桜の木の下で会いました
生まれてはじめての幸せな恋でした
地味な着物でそっと逢いにゆく恋でした
二年の月日が流れたころ
別れは突然やってきました
戦地に赴く青年を涙で
遠くから
見送りました
待っても待っても便りは届きませんでした
南の島の激戦で散っていったと
風の便りに聞きました
あの桜の下でまた会う固い約束
何度の春を数えたことでしょう
白い髪のおばあさんが
城跡の陽だまりで
誰かとお話しながら
散る桜の花びらを数えている
と・・・
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// 桜 咲 く 罪
桜 咲 く 罪
桜咲く罪 罪が舞う
桜咲く罪 罪が降る
彷徨う女は罪の色 さすらう男と罪な夜
ふたり並んで罪に酔う 三日三晩罪に酔う
桜咲く罪 罪が舞う
桜咲く罪 罪が降る
桜
いろ
色
は 現
うつつ
か まぼろしか
神よこの罪 許し給え
散りゆく桜は罪の色
妖しき一夜
ひとよ
を 罪が舞う
散りゆく桜に身を委ね
ふたりは並んで目を閉じる
桜咲く罪 罪の色 現世を染めて罪が舞う
あなたと私の罪の色
今宵 織りなす 罪な夜
桜
色
は 現
か まぼろしか
神よこの罪 許し給え
あなたと私の罪の色 今宵 織りなす 罪な夜
桜
色は 現か まぼろしか 神よこの罪 許し給え
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// 桜 (さくらまい) 舞
桜
さくらまい
舞
かすみか 雲か 匂いぞ いずる
ああ さくら さくら
桜
さくらまい
舞
熱き胸 躍らせて 恋人
あなた
の もとへ
ひととき 夢の中
ひとひら 恋 ひらら
少女の髪に 舞い降りる
目覚めて流る ひとすじ涙
ひととき 夢の中
ひとひら 恋 ひらら
舞い散る 舞い散る 黒髪に はらり
この恋は美しすぎて はかない恋と知ってか 桜
この恋は美しすぎて 危うい恋と知ってか 桜
さくら さくら 桜 舞
時よ 止まって
静かに 止まって
このまま このまま 夢に酔わせて
仄
ほの
紅
色
よ 永遠
とわ
に 永遠に
祈り 祈りつ くちづける
ああ さくら さくら 舞い散る 舞い散る
桜
さくらまい
舞
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// マリオネット・ルゥ
・・・
マ リ オ ネ ッ ト
・
ル ゥ
・・・
音楽が鳴りやまないの
目を覚ますと木箱の中は涙の海
音楽が鳴りやまないの
あぁ また聴こえる ヴァイオリンの音色
黒靴の足音が
近づいて
近づいて
拍手の中でわたしわたし
笑顔のルゥになるの
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// 叶うなら・・・
・・・
叶 う な ら
・・・
叶うなら
石の棲み家に
身を潜む
うすきすみれの二輪になりたい
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