// 散る桜の木の下で・・・

  
    

  



   散る桜の木の下で・・・ 




  内気なその女 ひと が恋をしたのは
  二十才のときでした


  文学が好きなその青年は

  桜をとても愛していました

  ふたりはいつも

  城跡のある町の桜の木の下で会いました

  生まれてはじめての幸せな恋でした

  地味な着物でそっと逢いにゆく恋でした

  二年の月日が流れたころ

  別れは突然やってきました
  戦地に赴く青年を涙で
遠くから見送りました



  待っても待っても便りは届きませんでした
  南の島の激戦で散っていったと

  風の便りに聞きました

  あの桜の下でまた会う固い約束

  何度の春を数えたことでしょう

  白い髪のおばあさんが
  城跡の陽だまりで
  誰かとお話しながら

  散る桜の花びらを数えている


    と・・・


               
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